ラグビーの歴史アレコレ(7)~パプアニューギニアのラグビー~

フットボール系エッセイ

オーストラリアとパプア・ニューギニアのフットボール繋がり

パプア・ニューギニアとは?

地球上が、現在の5大陸の姿では無かった頃の超大陸ゴンドワナでは、オーストラリアも南極も同じ大陸にありニューギニアもインドネシアも何もかも全て繋がっていた。という事はどうでも良いけど、ニューギニア中央山脈が形成された時期はヒマラヤ山脈の形成時期と同時代であった。そしてとんでもない劇的地殻変動によってゴンドワナは大きく割れた。その結果、現在のようなアジア~太平洋諸島~オーストラリア~南極等々の地形原形が出来た。

以上のような経緯で、現在は海で隔てられるオーストラリアとパプア・ニューギニアですが、人類の旅ではきっと深く関わっていて、今も、深い繋がりを持っている。

大日本帝国とパプア・ニューギニア

現在のパプア・ニューギニアやインドネシア、東ティモール、マレーシア、フィリピン、パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル、ナウル、ソロモン諸島、バヌアツ、ツバル、フィジー、トンガ、サモア、キリバス、クック諸島、そしてまだ独立を果たせていない地域を含む南太平洋は、欧米諸国やアメリカ合衆国、ニュージーランド、オーストラリアなどが領有権を激しく主張し、時には戦場となって奪い合いが起きていた。

1526年にポルトガル人に”見つかって”「パプア」と名付けられたニューギニアでも、植民地化争いが激しく繰り返された。紆余曲折の末、1884年、ニューギニア島の西半分はオランダ領、東半分の南側は大英帝国領、東半分の北側はドイツ帝国領と取り決められた。更に、ニュー・ブリテン島の周辺諸島群は当時の宰相に肖りビスマーク(ビスマルク)諸島と名付けられてドイツ領となっていた。ところが第一次世界大戦の太平洋戦線でドイツ帝国軍は日本軍に敗北する。その結果、ドイツは太平洋の委任統治領を失い、そっくりそのまま日本が統治を委任される。ですが、ニューギニア島に関しては、英国領を継承したオーストラリアがドイツ領も得て東半分を統治。西半分を統治していたオランダと共にニューギニアの盟主となる。それは、当時の国際連盟の中心国家であった日本も承認していたこと。ところが第二次世界大戦が勃発。

パプア・ニューギニアでは、大日本帝国の南方侵略ルートに位置したことで、日本軍とオーストラリア軍(連合軍)の激闘が行われた。当初の戦闘は大日本帝国軍が制した。ニュー・ブリテン島の東北端に位置するラバウルには、大日本帝国の陸軍と海軍が結集してラバウル航空隊が配置される。ラバウルという場所は、「ラバウル海軍航空隊」や「ラバウル小唄」(※ラバウル小唄は終戦頃に元歌=南洋航路を変更して作られた)などで、日本で最もよく知られた存在だった。

日本軍はオランダ領や英国領、そしてオーストラリア領などを次々と陥落させて、一時期は、太平洋諸島群の多くを占領下に置いていた。しかし・・・

ガダルカナル島での戦闘やラバウル航空決戦などで敗北を重ねた日本は制海権を失い、やがては日本本土を攻撃される事となる。そして、孤立無援となった南方の日本軍の戦いは「ジャワの極楽、ビルマの地獄、死んでも帰れぬニューギニア」という言葉を生むなど、兎に角、凄惨な状況に陥った。

パプア・ニューギニアの現在

オーストラリアが日本を憎悪する理由は、日本軍によるニューギニア侵攻にあると言って言い過ぎない (今では、日本を観光で訪れるオーストラリア人も多いが、捕鯨問題などもあり、どちらかと言えば日本は好かれていない)。しかし、パプア・ニューギニア全体ではないにせよ、上述したラバウルに於いては、日本人は歓迎対象らしいので、ラバウルを統治していた頃の日本の軍人とラバウルの現地人の関係は悪くはなかったのでしょう。

現在のパプア・ニューギニアは、総人口約895万人程(2020年の統計。住民登録に至っていない部族もあるみたいだから、実際はもっと多いでしょう)。君主は英国のチャールズ3世。その下に、英国王室が認めた実質パプア・ニューギニア国王である総督(現在は、第10代総督ボブ・ダダエ)。そして首相がいる(現在の首相はジェームズ・マラペ氏)。首都は珊瑚海に面するポートモレスビーで、第二次世界大戦中は連合国が拠点化していた基地の町。此処を何としてでも奪いたかった日本軍でしたが、1942年の珊瑚海海戦で大敗北するなど達せられずに敗戦への序章となった。戦後のポートモレスビーは、世界一治安が悪い首都という悪名がついていたけど、今でも、けっして治安回復には至っておらず、殺人率の高さで悪名高いモスクワの三倍もの殺人率を”誇る”。

パプア・ニューギニアのフットボール”文化”

首都がそんな感じのパプア・ニューギニアなので、恐らく、国民も相当に気が荒い?「文化」という言葉が似あいそうにない国家ですが、上述のように、欧米に荒された歴史がそうさせてしまい、今は、中国系マフィアの温床にもなっているらしい。日本に統治されていたパラオなどの方がよっぽど良い?(そりゃ、国家規模が全然違って比較するのは失礼だけど・・・)

パプア・ニューギニアは、世界的なフットボール大国。と言うより、もう何度か書いてますが、 ラグビーリーグ(13人制ラグビー)の世界的強豪国です。 そして、オーストラリアン・フットボール(=オージーボール)では、本家のオーストラリアを凌駕する世界最強国である?(というのは、本当は違うけど)。その他、サッカーやクリケットも行われているけど、ラグビーリーグとオージーボールに比べれば人気はない。ラグビーユニオンも行われているけど、こっちは圧倒的に弱い(世界ランク80位台)。まァ、日本だって逆にラグビーリーグやオージーボールの弱小国なので、こういう現象は珍しくもない。ところで、英連邦と関りが深かった国家や地域に於けるクリケットの人気は絶大。パプア・ニューギニアは物騒な国というイメージがあるけど、クリケットという長時間のゲームを大人しく観戦出来ているとしたら、治安回復の可能性はゼロではないでしょう。(大人しく観戦しているイメージが沸かないけど)。

ラグビーリーグ

オーストラリアに於けるラグビーリーグ最大のイベント「ステート・オブ・オリジン」と呼ばれるオールスター戦(ニューサウスウェールズ州選抜=ブルースvsクイーンズランド州選抜=マルーンズ)は、パプア・ニューギニアでも放送される。ブルースにもマルーンズにもパプア・ニューギニア出身の選手がいるからだけど、このテレビ観戦は命懸けで、毎年エキサイトして死人が出るらしい。パプア・ニューギニア・・・けっして陽気な観光気分で行けるような国とは思えない。でも、パプア・ニューギニアのラグビーリーグ代表が日本に一度来てくれないかな?どんな感じのプレーなのか見てみたい。尤も、ラグビーリーグの日本代表は世界的レベルにはないので、そういうのが実現するのは、日本がもう少し強くなってからでしょうけど。

順番が逆になったけど、パプア・ニューギニアのラグビーリーグは、パプア・ニューギニア・ラグビーフットボールリーグ(PNGRFL)という運営組織が統括していて、オーストラリアからの独立(1975年9月16日)に先駆け、1974年に国際ラグビーリーグ連盟に加盟が認められた。代表チームの愛称はクムルス(Kumuls)で、国鳥らしい。クムルスが、初めてワールドカップ(ラグビーリーグ・ワールドカップ)に出場したのは1985年。以降、ラグビーリーグでは、世界の強豪国の一つとして名を連ねる。そして、念願のワールドカップ自国開催も2017年に経験している。あとは優勝国になることだが、そこへの道のりはまだまだ遠そうだ。(なんせ、オーストラリアという絶対王者がいて、イングランド、ニュージーランド、フランスなどの壁は高い。けど、2017年大会で、アメリカ合衆国を64対0で破ったことにはスカッとした。この得点差は、クムルスにとっての記録でもある。でも、2000年の大会でオーストラリアに0対82で大敗北したことの払拭は出来ていない。日本が、ユニオンでニュージーランドにやり返すのと、パプア・ニューギニアが、リーグでオーストラリアにやり返すのとどっちが先か・・・ちょっと楽しみでもある。

ワラビーズにもパプア・ニューギニア選手が・・・

ラグビーユニオンのワールドカップで、日本が上位に食い込んでいることはパプア・ニューギニアには知られているのだろうか?因みに、ワールドカップ日本大会時のオーストラリア代表(ワラビーズ)には、ウィル・ゲニアというパプア・ニューギニア出身の世界屈指のスクラムハーフがいた。

オージーボール

オーストラリアン・フットボール(オージーボール)のワールドカップ=AFLインターナショナルカップは、2002年に始まって2017年度が6回目(3年に1度の開催で、2020年はコロナ禍で中止。2023年大会は1年先延ばしで今年メルボルンで開催される)。優勝回数は、アイルランドが2回。ニュージーランドが1回。パプア・ニューギニアが3回で現在2連覇中。パプア・ニューギニアは、優勝を逃した年は全て準優勝。圧倒的な強さを誇ります。でもでもでも・・・本当に、どうして本家のオーストラリアは優勝していないのか?しかも、過去6回開催された世界大会で、ベスト4にも一度も入っていない。どういう事?

つまり、オーストラリアは参加していないって事でしょう。AFL(オーストラリアン・フットボール・リーグ)は、オーストラリアで18のクラブチームが参加して行っているプロリーグ。そして、レベルが桁外れに違い過ぎる。オーストラリアが代表チーム組んでインターナショナルカップに出場すれば、大相撲の横綱がわんぱく相撲大会に参加するようなもの。対戦相手からすると悲惨な結果になる。そういう事情なので、世界一の称号は、オージーボールを愛してくれるオーストラリア以外の国にプレゼントしているのでしょう。アメ・フトも似たような大会があるし、レベルが近付いて来るまでは、オーストラリアは別世界の存在で居続ける。そして、パプア・ニューギニアやアイルランド、ニュージーランド、アメリカ合衆国、南アフリカ、デンマーク、中国、日本などに裾野が広がっていく事を期待している?という事ですかね。

因みに、オージーボールのルールはちょっとラグビーとは違うので説明が難しい。キックとパンチでパスしていく・・・ほぼ乱闘(ごめんなさい)。日本人にはあまり馴染みのない似合いそうにない競技だけど、でも、日本もラグビーリーグ同様の代表チーム名称「サムライズ」でインターナショナルカップに挑んでいる。上位国には全く以て歯が立たないのは競技人口が少ないので止むを得ないところ。オーストラリアでAFLの冠スポンサーとなっているのはトヨタ自動車。将来、日本人のスター選手が現れる可能性はある・・・かも?いや、ないな・笑

パラオ共和国

約4千年前にヒトが住んでいたらしいパラオは、16世紀頃には西欧人に知られ、1885年にスペインが植民地化する。1899年に、財政難に陥っていたスペインはパラオをドイツに売却。ドイツ領ニューギニアに組み込まれた。第一次世界大戦で、ドイツ守備隊を一蹴した日本軍が占領。第一次世界大戦後に日本の委任統治領となり、多くの日本人が移住した事で日本語が一般化する。約30年間、日本国の一員でもあったパラオは、1947年にアメリカ合衆国の信託統治下に置かれたが、日本時代と違い、アメリカ合衆国はパラオへの投資を殆ど行わなかった。1979年頃から、アメリカの核政策に断固反対の立場を取ったパラオは、1994年に独立国となる。が、これも、アメリカ合衆国が「利用価値のない相手」と見下した結果。そのような仕打ちを受けているので、パラオは、今でも、「日本時代が最高の時だった」として地球上で最も親日的な国家である。人口は2万人に満たない。経済力もお世辞にも強くない。だからこそ尚更、日本は、パラオを大事にするべきだ。

今、パラオで最も人気のあるスポーツは野球だけど、是非、ラグビーが浸透して欲しい。そして、トンガやサモアの選手のように、将来、日本に来て、日本代表入りを目指して欲しいかな。桜のジャージを着たパラオの選手が躍動する姿をパラオの人達が見られたら、多分物凄く喜んでくれると思う。そしてパプア・ニューギニアのように、オーストラリアなどのプロクラブと契約出来るような選手も出て来たら、少しでも活性化に繋がるのではなかろうか?・・・余談でした。

でも、日本からそれほどお金かけずに行けるみたいだし、日本語しか話せなくても安心して行けるみたいだし、一度は行ってみたい国です。

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