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直方隕石

国内最古の落下年記録?

福岡県直方市の須賀神社(=武徳神社)は、桜の名所として知られている。という事ですが、福岡県民の不肖私は、須賀神社さんの桜を存じ上げませんでした。でも、或ることで有名な神社さんですから名前くらいは知ってました。

貞観3年4月7日(ユリウス暦861年5月19日)の夜。その頃はまだ多くの住民が暮らしていたわけではなかったみたいですが、眩いばかりの光と物凄い轟音に気付いた人々は恐怖に慄いた。そして翌朝、深く抉られた土中には黒焦げた石が埋まっていた。恐らく、湯気か何かを発していたのかもしれないです。ビクビクしながら掘り出されたその石は桐箱に保管され、当時は武徳神社と呼ばれていた現在の須賀神社に大事に納められた。

それから12年後、武徳神社ではその石を祀った祇園祭でも行ったのでしょうか、祇園神社とも呼ばれるようになり、寧ろ、武徳神社ではなく”祇園社”として長く親しまれたと云われます。明治以降に須賀神社と名を改められますが、その石は現在も『直方隕石』として大事に保管・扱われていて、5年に一度、10月に開催される「神幸大祭」で一般公開される。次の公開予定は(2026年10月22日~10月23日)だと思われます。間違ってるかもしれないから、取り敢えず宇宙&古代ロマンに触れてみたい方は、神社さんのwebsite(公式サイトあるのかな?)などでご確認の上、是非、直方を訪れてみて下さい。

因みに、隕石が納められていた桐箱の蓋の裏には「貞観三年四月七日ニ納ム」という墨書があり、隕石そのものは重量472グラムのL6-コンドライトの石質隕石であるという事です。更に、須賀神社さんの境内にある土俵では、少年時代の元大関魁皇(=浅香山親方)が相撲をとったとか。

落下年の真相?

尤も、直方隕石の落下年には約900年もの誤差を伴う異説(真説?)があります。そちらの説では、寛延2年5月19日(1749年7月13日)の『下境村祇園社ノ飛石伝記』として、「大きな音とともに飛来する物体が目撃され、祇園社(=武徳神社=現在の須賀神社)の境内にある木にあたって隣家に落ちたため、土の中を掘ると立烏帽子のような形をした黒い石が現れ、珍重なものであるとされて神前に奉納された」と記録されている。記録者は、江戸時代後期の福岡黒田藩士で国学者としても多くの著書を遺した・青柳種信。下境村祇園社ノ飛石伝記を記述された書は『筑前町村書上帳』。記録者が有名な学者であり、直方藩(=東蓮寺藩)は福岡黒田藩の支藩ですから、あまり間違った報告や記載も行われていない筈。

861年なら現存記録として世界最古となり、1749年なら国内4番目の古い隕石記録となる。後者でいいんじゃないかな?信憑性を疑われては、隕石落下そのものが疑われることになりかねなし。そして、1749年の落下というのは結構重要な意味を持つと考えます。

南野隕石(現・愛知県名古屋市南区南野/1632年10月:国立博物館で鑑定認定)、笹ヶ瀬隕石(現・静岡県浜松市東区篠ヶ瀬町/1704年2月:浜松科学館で保管中)、小城隕石(佐賀県小城市/1741年7月:ロンドン自然史博物館で保管中)という17世紀~18世紀に列島に落ちた隕石は、重要な史料として研究対象になった。小城の8年後に隣県である直方にも隕石が落下するって、この頃は結構天体衝突的にはヤバかったんじゃないかな?・・・という想いを巡らすことも出来るから、1749年落下で良いのではないか?落下年を「こっちが古いぞ!」とか競ったって何の意味もないから。重要なのは、それ(隕石落下)を何とか予測したり、被害を最小限に留めたり、何とか避けるための科学的なヒントを得ることだから。

本当に危険だから・・・

宇宙から落下して来る隕石はロマンのある話でもありますが、実際は超危険な存在。隕石衝突は、生物の破滅を伴うような急激な気候変更を齎す可能性を秘めています。「あ、ぶつかった」次の瞬間、私たちは生き物ではなくなっているかもしれないですから。 

本当に危険だった隕石としてまだ記憶に新しいのが、2013年2月15日のエカテリンブルク時間 (YEKT) 9時20分26秒にロシアのウラル連邦チェリャビンスク州付近に落下(衝突)した隕石。

この隕石は、正に、唐突に真冬のロシアを襲った隕石落下~爆発事故であり、数多くの建物が損害を受けた(4474棟の建物の窓ガラスが割れ、ドアが吹っ飛ぶなどした)。負傷者の数も重傷者51人を含む1491人に上ったと報じられた。逆に言えば、それだけの”少数被害”で済んで良かったとも言える。

この隕石自体が発した爆発エネルギーは、NASAの計算により、TNT換算で約500キロトンと見積もられた。これは約2100兆J (2.1PJ) で、広島型原爆の30倍以上にあたるとされる。広島型原発が上空600メートルでの爆発だった事に対して、この隕石は上空数十キロメートルの位置で爆発した為にこの程度の被害で済んだが(しかも大都市ではない)、もしももっと近い位置での爆発で、もう少し大きい隕石なら・・・それを考えるとゾッとする。しかも、この付近にはベロヤルスク原子力発電所や使用済み核燃料再処理工場もあるのだから、それらを直撃していたら本当に考えられないような事が起きたかもしれず、未曽有の大惨事が引き起こされた可能性に対し間一髪で、或る意味幸運だったと言えなくもない。

直径3メートルから7メートル程度の隕石は、ほぼ毎日地球に落下(衝突)していることは周知の事実。ですが、そのほとんどは大気圏で燃え尽きるか、人がいない地域や海上に落下しています。チェリャビンスクに落ちたクラスの隕石が、人が居住する地域の近くに落下することは極めて珍しい。NASAは、この現象は百年に一度あるかないかと説明したのですが・・・

そこで、17世紀や18世紀に日本に落ちた「4つの隕石」です。直方隕石の落下年1749年と修正するなら、約120年間で4度です。当時は現在に比すると大きな人口じゃなかったかもしれませんが、名古屋も浜松も大都市です。小城だって直方だって過疎地じゃない。こういう隕石落下が結構短い周期で起きるなら、「どこで暮らせばいいんだ!」と、誰に向かっての事か知らんけど、相手構わず文句を言い出す人が現れても不思議じゃない。

百年に一度にしたって、結構高い確率ですよね。生きている間に同年代の何処かの誰かがそれに遭遇してしまうのですからね。その誰かは自分かもしれないしね。映像として世界発信されましたし、隕石衝突は恐いですよ。

大気圏に突入してもその威力を保ち大気中で大爆発した隕石・・・これが世界中の何処かの大都市や、核施設を直撃したら・・・正に”命あっての物種”です。小惑星や彗星接近とか事前報道で軌道を知らされる事なら(気持ちだけでも)身構えたりも出来るでしょうけど、突然の隕石衝突は・・・まァ、その地域の全員で一緒に食らえば、皆一瞬にして燃えて溶けて消えるだけですけどね。
「一瞬の隕石衝突だけで地球の生態系は変えられる」ということを、改めて思い知らされた2013年の隕石でした。

1908年に、同じロシアのツングースカ(シベリア中央部)で謎の大爆発が起きているらしい。隕石ではなく、彗星とか小惑星の衝突説(こっちの方が怖そうですけど)が有力らしいですが、(他にも、地下資源噴出説とか色々)、もしも隕石によるものだったとするなら、2013年はそれから105年後でした。隕石衝突の確率は、「百年に一度」程度。周期的にはそれが証明された事になります。でも百年に一度は、百年後を指す意味ではなく、また来年起きて次の百年間起きない事かもしれない。

大地震の予知さえ未だ出来ないでいる現在の地球の科学力では、宇宙時間の確率予測なんて出来るわけがない。

戦争とか大災害とか病気や怪我とか地球発の要因ではなく、宇宙規模の天体衝突は一瞬にして全人類が一緒に消えて無くなることも有り得る。今、この瞬間にそういうことが起きても何ら不思議ではない。宇宙規模で起きることに対して、地球だけが、現生人類だけが常に命拾いする保証は何もないから。

この星ごと吹っ飛ばされてしまえば何もかも無くなる。そんな事は誰にでも分かっているのに、ヒトは地球の中で地域を取り合う戦争を戦争を止められない。愚かなこと。

♪星に願いを♪という題名の歌もありますが、「今日も当たらずに良かった」と、宝くじとは逆の事を日々感謝する。でも「いつかは必ず誰かに当たる」。当たるなら、やっぱり宝くじがいいよね。と、笑ってお終い。

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