詐欺と虚飾のジェノサイド

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ジェノサイド(Genocide)。ギリシア語で種や族を表す言葉「Genos」とラテン語で殺すを表す言葉「Cide」を掛け合わせた造語。つまり、人種、民族、部族などに対する抹殺・抹消行為を指す。
この言葉を最初に使ったのは、『ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺裁判(=ニュルンベルク裁判)』に対し、当時のユダヤ系ポーランド人法律家ラファエル・レムキンで、現在では一般化している言葉。

ホロコースト(Holocaust)。ギリシア語で全体の犠牲を意味する「Holokauston」も元にして、ユダヤ教で神に捧げる儀式=獣の丸焼きを「Holocaust」と言っていたことをそのまま用いて、ナチスによるユダヤ人大虐殺を対象にしている言葉。

だから、ホロコーストとジェノサイドは似て非ざるもの。ジェノサイド的なことをホロコーストと表現したら笑われるか叱られるから要注意。ニュルブリンク裁判を、二つの言葉で言い換えれば、『ナチスドイツによるホロコーストの罪を問う為のジェノサイド裁判』・・・かな?若しくは、『ナチスドイツのジェノサイドの罪を問う為のホロコースト裁判』?どっちでもまぁ意味は通じそう。

ジェノサイド条約

批准国や加盟国

国連が関与し、ジェノサイドという言葉をそのまま用いられている国際条約が『ジェノサイド条約=集団抹殺犯罪の防止及び処罰に関する条約』。1951年1月12日に発効され、2023年4月段階では、世界の152ヶ国が締約している。但し、正式に国家として批准している数だと激減する。

【批准国】
エチオピア、オーストラリア、ノルウェー、アイスランド、エクアドル、パナマ、グアテマラ、イスラエル、リベリア、フィリピン、エルサルバドル、フランス、ハイチ、デンマーク、ベルギー、エジプト、ホンジェラス、ブラジル、スウェーデン、メキシコ、カナダ、キューバ、チリ、レバノン、ギリシア、ビルマ、イラン、パキスタン、インド、コロンビア、ペルー、ウルグアイ、ニュージーランド、アメリカ、パラグアイ、ボリビア、以上36ヶ国。ちょっと分からないのが、白ロシア・ソビエト社会主義共和国当時のベラルーシ(多分、引き継いでいるとは思うけど)。中華民国(=台湾)は批准しているが、国家承認が難しい状態。

加盟はしているものの、批准出来ていない国は152-36=116ヶ国。でいいと思う。けど、分かっている国を数えたら107ヶ国にしかならないから、正式な数かどうかは不肖私には分かりません。ドミニカ共和国は署名だけらしい。

締約国でいいの?

アメリカ合衆国やロシアは、しょっちゅう何処かと戦争してるでしょう。虐殺も、していますよね。だから、締約国ではあっても批准しない(出来ない)。北朝鮮だって、何処かの国を出来れば抹殺したいが為の核開発やロケット技術蓄積でしょう。そもそも、パレスチナ相手に明らかに大量虐殺を続けているイスラエルが批准国ってどういうことさ?虐殺対象のパレスチナが国家承認を受けられない状態で国連に対しては単にオブザーバー参加だから、イスラエルの罪は問われない?って事か?そもそも・・・

クルド、パレスチナ、チベット、東トルキスタン、結構知られているそれら以外にも世界には、現国家から独立して自分達の新国家を欲しがっている民族や地域は無数にある。独立運動が過激化して内戦状態になっている個所も一つや二つじゃない。しかし、『大国の主張』以外に正義が認められない国連には、何をどう訴えても解決の糸口さえ与えられない。国連ってのは、ほんとどうしようもなくいい加減で中身が腐っている。兎に角、安保理に於ける常任理事国の拒否権発動問題を何とかして欲しいよね。常任理事国が一ヶ国でも反対票を投じれば拒否権が発動される?多数決も何も機能しない議場なんて、存在意義もなく、こんな組織に多額を納めさせられている日本国家・・・全く馬鹿げている。

何処まで遡る?

アルメニアvsトルコ

世界で初めてキリスト教を国教とした国家は、紀元301年のアルメニア王国。現代にも続いているアルメニア正教会は世界最古の正教会です。

現在アルメニア高原と呼ばれるその一帯には、かなり古い時代からナイリ(或いはウルアトリ)と呼ばれる民族部族が暮らしていたが、彼らは常にアッシリア帝国に圧せられていた。しかし、アラマと呼ばれる指導者がトップに君臨した紀元前858年にウラルトゥ王国を建国宣言。500年以上にも及ぶアッシリア支配から抜け出した。しかし、270年ほど経った紀元前585年にスキタイ=サカ族の攻撃を受けて滅亡。国家を失ったナイリ族はこの後にインド・ヨーロッパ語族の何らかの部族と混血してアルメニア人を名乗るようになった。或いは、アルメニア人が何処からともなく現れた。

アルメニア人は、アケメネス朝(ペルシア)の支配を受け、更にセレコウス朝の支配も受けたが耐え続け、紀元前188年にアルメニア王国を建国する。

紀元前95年に即位したティグラネス2世は大王と称され領土を大幅拡張した国家は大アルメニア王国と呼ばれる。が、大アルメニアの栄華は長くは続かず、共和政ローマとの戦いが何度か繰り返され敗北が続いたアルメニアは衰退。属州ローマとして失った領土以外のアルメニアもアルケサス朝(ペルシア)の庇護を受けた。そして時は流れて301年に、先述したようにキリスト教国家となった。

その後のアルメニアは、周辺のイスラム教諸国家に圧せられたり、或いは東ローマ帝国の配下になったり、兎に角、何とかして生き延びることが最優先で、国家の拡張などは二の次、三の次。歴史上、何度だって虐殺を受けた。そして、近代最初のジェノサイド被害者(被害国家)となったのもアルメニア。加害者はオスマン帝国。

オスマン帝国と現在のトルコを完全に同一視するのは間違っていることだが、アルメニア人に対するジェノサイドの罪をトルコの罪としてアルメニアが問題を提起し、国家的賠償を請求している。でもトルコは堂々としたもので、それ(アルメニア人に対するジェノサイド)はオスマン帝国時代の事(そこまでは認めている)であり、アルメニアからの問題提起に対しては責任範囲外と云い切っています。

ドイツvsイスラエル

アウシュヴィッツで起きたユダヤ人に対するジェノサイドは、「全ての罪は、ナチス・ドイツとヒトラーにある」と結論付けられた。

消滅したナチス、既にこの世にいないヒトラー。それらが行った事であると国際社会がそのように位置付けた以上、もうどうでも良い事になっている。どうでも良い事であれば、数字は大きいほどインパクトを与えられる。虐殺されたと云われる人数は、多くて400万人。少なくて15万人。出鱈目に数字が違う。ユネスコの世界遺産登録に於いては、120万人という説が採用されている。どのみち、いい加減な数字で正確な人数など永久に分からないのでしょう。400万人であろうと1千万人であろうと、もっと多くであろうと、数字の独り歩きを誰も止められないし、止めようともしない。しかも・・・

現代のドイツ人は、アウシュヴィッツのことなど自分達とは無関係というスタンスで、しかも、現代のドイツ国家をそのことで悪く言う国家国民は何処にもない。当事者とも言えるイスラエルでさえ現代のドイツには何も言わない。

署名すら拒否し続ける日本のスタンス

ところで日本は、ジェノサイド条約には署名すらしていない。が批准しない理由は、「国内法の整備が追い付かないから」という事らしい。それで宜しいのではないでしょうかね(批准しなくて正解)。日本は、条約に加盟しようがしまいが、専守防衛以外の対外戦争を行えない事になっている。それを信用出来ない国とは付き合えない(付き合わない)というスタンスを貫いて何ら問題がないと個人的には思います。でも、国民大多数が署名すら出来ない状態を恥と感じるのであれば、だったら憲法から作り変えなさいよ、という事になる。それもまた大賛成。何かと曰く付きの憲法なんて要らない。

日本は、”南京事件”(=南京大虐殺)の極悪犯として中国から糾弾されています。トルコがオスマン帝国とは関係ない国家と言い切り、ドイツがナチス頃のドイツは別の国と言い切る。しかし日本国は、「大日本帝国と昭和20年以降の日本は別の国」なんていう恥ずかしい卑怯な言い訳はしない。皇紀元年(紀元前660年)以来、連綿と続く誇りあるニッポン人の国家として、全ての国史に責任を負っています。だから政府は、ニッポン人として責任(補償)を果たすべき事は果たすと云うでしょうし、謝りもするでしょう。しかし、不確かなジェノサイドに対して謝罪する理由は何も無い。

「ドイツの知恵に学べ」「トルコの知恵に学べ」と世界はしきりに繰り返す。「大日本帝国と現在の日本は関係ない」と言えばそれで済む問題だと。どうして日本はそれをやらないのだ?と。面倒くさい事はさっさと終わらせて、中共政府との諍いをストップさせ、世界経済が上手く行くように貢献するべきだと。国際社会は日本への自白要求を続けます。「さっさと認めて、楽になれ」と。

不思議な話だ。原爆や各都市への大空襲で夥しい数の日本の民間人が”虐殺”されたことは棚上げされ、中国に於ける中国軍兵士の大量死は虐殺と云われる。南京の死者数にもアウシュヴィッツ同様に色々な数字が並んでいるが、どの数字にも共通するのは、民間人死者数よりも兵隊の死者数の方が圧倒的に多いこと。それが戦争だよね?だからこそ、戦争は罪深いってことだろう。

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